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「聞くに堪えない3日間」 [山口県光市母子殺害事件考]

「聞くに堪えない3日間」
山口県光市母子殺害事件の差し戻し審の第一回集中審理が行われ、終了後の被害者側を代表して夫の本村洋氏が語った言葉だ。

私もそう思う。

日本というのは、被害者側の心情を全く無視して国として社会秩序を維持し、加害者側の矯正更正のために刑罰を与えさえすれば良いという立場だったと思える。
法の趣旨というのはそういうものではないのかも知れないが現実としてはそうなっている。

今回の裁判では、被告側に対して非常な不信感を覚える。
もちろん、事件以降ずっと思ってきたことなのだが、より一層募っているということだ。
まず、彼らは一審の無期懲役判決に対して控訴していない。
ということは、一審では全て真実を語り尽し、刑罰も妥当なものであるということを認めているのだ。
控訴するかしないかは本人が決めることで、弁護士がしなかったということは理由にはならない。
「しなかった」と言う事実に対してどのように向き合うのかということだ。

ただ、以前の私ならこの点を強行に語っていたが、先日の富山冤罪事件以降少し見方をかえている。
「しなかった」のは警察検察の強硬な対応があったため意志の弱い少年は断念せざるを得なかったと百歩譲って思うとしよう。
それならば、弁護士をキチンと懲戒処分すべきだろう。
キチンと真実を調べることをせず、また控訴すらしないことで被告人の権利を侵害したのだから。

しかし、 二審も一審同様の「殺意は認めるが反省している」というスタンスを崩していない。
この点からみると現弁護団の言う少年は検察などに抑圧されたため今になって事実を思い出したという「新たな証拠性」というのは薄いのではないだろうか。
もし、これを事実であるとするならば、一審二審では結果的な嘘を押し通していたことになる。
このような被告側の対応は司法制度を愚弄したものであって、弁護士界全体を揺るがす大問題に発展するのではないだろうか。
全力を持って被告人を守ることが被告弁護人としての務めであるにも関わらず、それをしないで被告人の人権を侵害していることが平然と弁護士が行っているということになるのだから。
では、日弁連も組織として謝罪すべきではないのか。

さて、本題に戻るが、一審、二審と全く違うことを四審目で語って良いものなのか。
三審目の 最高裁では「死刑を回避する特段の情状がない限り回避すべきではない」としている。
これは一審、二審の証拠が真実であり、刑罰として「死刑」なのか「そうでないのか」ということを争うために差し戻しているということではないのか。
それを「一審、二審の証拠自体が嘘偽りである」として新たに出直すというのでは何回審理をすれば良いのかということになる。

たぶん、この裁判での判決に対しても被告側は上告をし、最高裁で判決が出れば今度は再審請求( 刑事訴訟法第435条)をするであろう。
再審は「確定した判決について、一定の要件を満たす重大な理由がある場合に、再審理を行なうこと」で一定な要件というのは「新たな証拠」のことでこれまでの再審事例をみると「新たな物的証拠」だけではなく「心理鑑定による証拠」などでも請求している場合すらある。
すなわち、「何とでもできる」と言うことだ。
それに、刑事訴訟の場合には「一事不再理の原則」( 日本国憲法第39条)により、有罪判決を受けた者の利益のためにしか行なうことができない。
簡単に言えば、被告側からしか請求できないのだ。
もし仮にこれで「無期懲役以下」の刑罰になった場合、検察は最高裁への上告はできても、再審は請求できないということだ。

ただ、今回の本村氏の会見で気になったのは「鋭い目でにらみつけられた」とか「この人間を社会にかえしてはいけない。裁けない司法ならば、いらない」と語ったことだ。
これは被害者側の心情としてのみ受け取っていくが、外部の人が使うべきではないだろう。

私は、死刑であるか否かを意見するつもりはもうない。
それは、裁判が適正に行われ、適切な処罰を求めたいからだ。
ただ一つ言いたいのは、死刑という刑罰がある以上、それに該当する犯罪であるにも関わらず、人権ということだけで回避するというのはして欲しくないと願う。
そして、死刑廃止論とこの裁判での死刑回避策が別のものとして考えるべきだと思う。


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コメント 4

こう

このままだと、このような事件が何度でも起こる社会になりそうで、怖くなってきました。
by こう (2007-07-02 08:55) 

南雲しのぶ

こうちゃん、コメントありがとう。
いやいや、勘違いしては行けません。
こういう事件はすでに何件も起きているのです。
弁護士側だって「本当なら逆送されて、懲役何年かというような事件なのに、今回は・・・」と言っているように知られていないだけなのです。
by 南雲しのぶ (2007-07-02 17:50) 

mako

これで 彼が社会へ戻ってきて 類似事件を起こしたら・・・また護られるんですよね・・・。
たしか 彼(加害者)が友人に出した手紙には 反省するよりは早く自由になりたいとあったとか。

そんな人がとなりにいるかも知れない生活・・・怖いですね。
by mako (2007-07-03 10:35) 

南雲しのぶ

makoさん、コメントありがとう。
彼が社会に戻って一体何ができるのかと考えると恐ろしさすら覚えます。
確かに、こんな人が隣に住んだら困ってしまいますよね。
本心から謝罪し更生しているとはとても思えないですから。
by 南雲しのぶ (2007-07-03 19:14) 

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