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保護観察下での訪問拒否を禁止 [事件・事故]

仮釈放や執行猶予って実はまだ刑罰を課されている最中なんですよね。
厳密に言えば違うのだが、それでも何らかの制約を受けている状態ということになる。

その制約というのが保護観察というものだ。
保護観察とは社会内処遇と呼ばれ、保護観察官や保護司の指導・監督を受けながら社会の中で更生を果たして行くというものだ。

仮釈放の受刑者にすれば満期釈放されるまでの適応を図る期間とも言えるし、執行猶予中の者にとっては社会の中で反省を促すというという期間でもある。
前者は犯罪者予防更生法、後者は執行猶予者保護観察法という法律によって制度化されたものだ。

ただ、社会が複雑化し受刑者にも人権をという考えが跋扈するようになった昨今では、対応しきれずに軋みを生み出している。
なぜならば、保護観察官や保護司には対象者の生活ぶりを確かめようと家庭訪問しても居留守を使われたり面会を拒絶されたりすることが増えてきているからなのだ。

そこで法務省の有識者会議で、対象者が保護観察官らの訪問面会の要求を拒むことができないようにする「往訪受入れ義務」を入れるように最終提言で打ち出すことを固めた。
私もこの考え方には賛同する。
反対にこれまで受け入れなくとも良かったというのが驚きすら感ずる。

しかし、往訪受入れは義務づけられても立ち入り調査権はプライバシー保護から見送られておりまだまだ片手落ちという感じもする。

最初にも書いたが保護観察中はまだ刑の執行中なのだ。執行猶予中とてその名の通り猶予しているに過ぎない。
そこに一般市民と同様の人権があるのだろうか。
刑務所の中に入っていれば強制的な立ち入り調査を行えるのに刑期内なのに社会にでたらできないというのはおかしくないだろうか。

ただ、このように法律を厳しくするのも一部人権尊重派による過激な人権保護の押しつけによって起きていると考えられる。
「法律で決まっていないのだから良い」というのは司法の世界では当然のことなのだろうが、それ以外の世界で暮らしている私としては「法律って最低限の道徳なんじゃないの」って思うわけだ。

結局、わからず屋が多いから最低限を引き上げようというのは至極当然の流れだ。
そうなる前に人権派はなんとかできなかったのだろうか。
こうやってドンドン制約されていく一部の人間のための人権ばかりをことさら守ろうとすることがどれだけ社会の反作用になっているのかも考えるべきではなかろうか。

社会というのは張り詰められると反対の方向にばかり動く。
戦前の人権抑圧を防ぐために人権を保護しすぎてやしないか、ともう一度見つめ直す時期にきているのかも知れない。

ちなみに先日、法務省が全国の保護観察官を対象に今年1月に実施したアンケートでは、「生活実態を的確に把握できているか」との問いに「そう思う」と答えたのは4%に過ぎなかったことを申し添える。


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コメント 11

kenji47

>仮釈放や執行猶予って実はまだ刑罰を課されている最中なんですよね。
厳密に言えば違うのだが、それでも何らかの制約を受けている状態ということになる。

誤解なきように言っておきますが、仮釈放と執行猶予は同じではありません。
仮釈放は刑罰にまだ課されているともいえますが、執行猶予は文字通り科刑を猶予されている状態です。

>その制約というのが保護観察というものだ。

仮釈放には保護観察は必要的ですが、執行猶予の場合、必ずしも保護観察がつくとは限りません。
by kenji47 (2006-06-17 14:58) 

南雲しのぶ

kenji47さん、コメントありがとう。
違いは存じております。
色々悩みましたが「厳密に言えば」ということで伝わるかと思っておりましたが端折りすぎでしたでしょうか。
そのために二つの法も明示してみたのですが・・・。
この記事の本旨としては、「面会を拒否する対象者が居る」ということ。そしてその「一部の行動によって法が厳格化されようとしている」こと。その2点にあります。
このようにご意見ご質問を受ければお応えしますが、本文で枝葉まで細かく説明していると、ただでさえ私の記事は長くなる傾向にあるもので書く際には悩みどころでもあります。
論文ではありませんので、詳細な説明は避けたいということもありますし、それで伝わるのかという心配もあります。
あとは読んでいただいた方の受け取り方にお任せするしかないのかも知れないというところが文字コミュニケーションの難しさなのでしょう。
by 南雲しのぶ (2006-06-17 18:04) 

an_accused

 一つご質問いたします。
 エントリー本文に「一部人権尊重派による過激な人権保護の押し付け」とありますが、「一部人権尊重派」とは、この場合誰を指しておられるのですか。
 日弁連人権擁護委員会などが、「保護観察に付された者には保護監察官等の往訪を受諾する義務はない」などと声高にアピールしているといったことを、私は寡聞にして知りませんので、もしそのような事実があるならばご教示いただければ幸いです。
by an_accused (2006-06-17 19:24) 

南雲しのぶ

an_accusedさん、コメントありがとう。
日弁連人権擁護委員会というのはどこから出て来たのでしょうか?
日弁連人権擁護委員会が言ったとか書いたつもりは無いのですが・・・。
誘導尋問ですか?
それにその筋はこれまでの流れから言えばan_accusedさんの方がお詳しいではありませんか。
by 南雲しのぶ (2006-06-17 20:14) 

an_accused

>南雲さま
 応答をいただき、ありがとうございます。
 「日弁連人権擁護委員会」を取り上げたのは単なる例示です。
 私のことを「刑事司法に詳しい」とは過分な評価だとは思いますが、素直にお礼を申し上げます。
 話は元に戻りますが、エントリー本文における「一部人権尊重派」とは、この場合誰を指しておられるのですか。また、その「一部人権尊重派」が、保護観察官、保護司の方々または保護観察に付された者に対して、一体どのような「過激な人権保護の押し付け」を行い、適正な保護観察の遂行を妨げたのですか。
by an_accused (2006-06-17 20:42) 

南雲しのぶ

an_accusedさん、失礼し前段の質問に答えていなかった。
一部人権尊重派とは、特別誰かを指してはいません。
強いて言えばプライバシーだけを重視してとらえている声ということでしょうか。
事実、立ち入り調査権はプライバシー保護の観点から見送られています。
そういうプライバシーへの考え方(ちょっと言葉が見つからず微妙にニュアンスが違うのですが)があるということが物語っているのだと思います。
by 南雲しのぶ (2006-06-17 20:42) 

南雲しのぶ

an_accusedさん、コメントありがとう。
素早しレスに追記も間に合いませんでした。
2度目のコメントについては、上記で答えたとおりです。
「考え方」というのにはアップしたあとも少し違和感を覚えていますが主旨としてはそのようなイメージです。
それから、私はこのブログで色々なことを知りたいと思っているのです。
今回、an_accusedさんのコメントには質問ばかりでお考えが述べていただけていません。
面接強制についてのお考えをお聞かせいただければ幸いです。
by 南雲しのぶ (2006-06-17 20:49) 

an_accused

>南雲さま
 再度の応答をいただき、ありがとうございます。
 ご希望に沿う形で、今回のテーマについて卑見を申し述べます。

 私は、保護観察制度に「面接受諾義務」を設けることについては賛成です。
 もっとも、本エントリー中には関連法規が明示されておりますので、きっと南雲さまはご存知かと思いますが、保護観察に付されている者(以下「保護観察対象者」という。)が保護監察官及び保護司(以下「保護監察官等」という。)との面接を拒むなどした場合、地方更生保護委員会及び保護観察所の長は、保護観察対象者を呼び出し、質問することができますし(犯罪者予防更生法41条)、呼び出しに応じない場合(応じないおそれがある場合)には引致状に基づいて引致し(同条2項)、一定期間身体拘束することもできます(同法45条)。
 したがって、もしも保護観察対象者が保護監察官等の往訪を受け入れなかったり居所への立ち入りを拒んだりするならば、保護監察官等は上記の措置を講じることを告げ、それでも拒否した場合には実際に上記措置を講じればよいのですから、現行制度下においても面接を義務的に受諾されることは可能です。「面接受諾義務」の法制化は、現行制度において事実上義務であったものを明記するに過ぎないと考えられるので、これによって更生保護行政のあり方を劇的に変化させることはないと思われます。更生保護行政の実効性を高めるのは、このような小手先の法改正よりも大幅な人員増・予算増でしょう(「小さな政府」には望むべくもありませんが)。

 また、「事実、立ち入り調査権はプライバシー保護の観点から見送られています」とのことですが、これは「往訪受忍義務を課し,何度も理由なく往訪に応じない場合には仮出獄取消し等の不良措置をとればよいのであって,実効性を担保できない立入調査権を直ちに導入する必要性は感じられない」などという理由から、有識者会議の総意として今回の提言には盛り込まれなかったのであり、事務局である法務省も了解していることでもあります。南雲さまが推測なさっておられるように「一部人権尊重派が声高に保護観察対象者のプライバシーを主張したから見送られた」というわけではありません(なお、有識者会議の議事録を読む限り、立入調査権の導入に慎重な意見を述べたのは桝井成夫・読売新聞東京本社論説委員、佐藤英彦・前警察庁長官、佐伯仁志・東大教授などであり、「過激な人権保護を押し付ける人権尊重派」と評されるような人物ではなさそうです)。

 なお、エントリー本文に「このように法律を厳しくするのも一部人権尊重派による過激な人権保護の押しつけによって起きていると考えられる」とお書きになっておられ、また別のパラグラフに「そうなる前に人権派はなんとかできなかったのだろうか。」という記述があるところから、本エントリーにおける「人権尊重派」ないし「人権派」とは具体的な運動主体(社会に対して継続的に働きかけを行う人々)を指すものと理解するのが自然であり、まさか「特別誰かを指すのではないと理解せよ」と言われるとは思いもよりませんでした(これを「文字コミュニケーションの難しさ」としてしまうのは楽なことですが、それでは本当に「色々なことを知る」のは望めないでしょうね)。
by an_accused (2006-06-17 23:13) 

南雲しのぶ

an_accusedさん、コメントありがとう。
貴重なご意見、大変参考になりました。
スゴいですね。議事録まで読み込んでいらっしゃるなんて。
それと、人権派についてですが、具体的な運等主体を指すものと受け取られる意味が良くわかりません。
私はこれまでも特定の団体についてなら「人権団体」と表記してい来ています。いちいち、団体を意図しているのに団体と使わないなどということはしません。それはご存知のことと思いますが。
最初から意図していないことを意図していると言われても答えに困るばかりです。
反対に、日弁連まで持ち出されてどうしても団体に結びつけたいという意図があるのでしょうか?
確かに誤解される表記であれば自分の至らなさを恥じるばかりです。

ただ、「理解せよ」などと上からもの申すような言い方をしているとのご指摘にはいささか納得ができません。
いつ「理解せよ」と申し上げましたでしょうか?
私もミスリードを誘うような書き方をしているのでしょうが、an_accusedさんの申されようも一つ言葉の揚げ足取りをされているように思えてなりません。

それから「したがって、もしも保護観察対象者が保護監察官等の往訪を受け入れなかったり、(中略)現行制度下においても面接を義務的に受諾されることは可能です。」については、それではなぜ上手く機能していないのでしょうか?
機能していればわざわざ厳格化する必要性はないと思いますが。
私はそう思っていたのですが、機能しないから厳格化、ということではないのでしょうか?別の理由がそこにあるということですか?

an_accusedさんのこれまでの物言いは「無知なくせに法律や裁判について大きな事言う奴は口をつぐんでいろ」と言っているように、私には受け取れてなりません。
無知な者に自らの力をお示しになりたいと思っていらっしゃるのでしたらご自身のサイトでこれら諸問題を広く取り上げられる方がよろしいのではないでしょうか。
私程度の知識しか無い人がほとんどだと思いますので。
それよりも気に喰わないブログは読まないというのが一番です。
わざわざ貴重な時間を使ってお読みいただくような内容ではありませんので。
by 南雲しのぶ (2006-06-18 00:06) 

an_accused

>南雲さま
 どうやら結論が出たようですね。

「私はこのブログで色々なことを知りたいと思っている」とお書きになった直後のコメントが「気に喰わないブログは読まないというのが一番です」というのは驚きですが、それが南雲さまの「事実と向き合う姿勢」を表しているのでしょう。

 「an_accusedさんのこれまでの物言いは『無知なくせに法律や裁判について大きな事言う奴は口をつぐんでいろ』といっているように、私には受け取れてなりません。」とのことですが、南雲さまの言葉を借りれば、「最初から意図していないことを意図していると言われても答えに困るばかりです。」私は、一度たりとも「口を噤め」などと申し上げてはおりませんよ。
 本エントリーに関して言えば、更生保護行政に対してどのような「一部人権擁護派」がどのような「過激な人権保護の押し付け」をおこなっていたのか具体的に教えてください、と申し上げただけです。

 今のところ具体的にご教示いただけていないのですから、南雲さまが主張なさる「一部人権擁護派」には実体がないということでしょう。そして、有識者会議の提言が立入調査権の導入を見送る内容になったのは「保護観察対象者のプライバシーだけを重視した結果」でも「過激な人権保護の押し付けの結果」でもなかったわけです。
 結局のところ、「一部人権尊重派による過激な人権保護の押し付け」とは、単に南雲さまが作り上げた虚像に過ぎないということです。

 これは「無知」の問題ではありません。「歪んだ先入観」の問題です。

 追記:「それではなぜ上手く機能していないのでしょうか?」とのことですが、既に前コメントで述べているはずです。
by an_accused (2006-06-18 15:15) 

南雲しのぶ

an_accusedさん、コメントありがとう。
最初にいらした時から多分、こうなるだろうとわかっていました。
なのでan_accusedさんがそう思われるのならそう思っていただけば良いのだと思います。
これが私からの応えです。
この問題についてどうとらえるかを判断するのは、拙ブログを読んでいる多くの方がすることですから。

「読まなければ良い」と書いてしまったことは自分でもとても残念に思っています。
事実、広く意見や考えを聞きたいという願いから開いているわけですから。
ただ、意見をきくにしても話をするにしても、私の進め方とaccusedさんの進め方はあまりに違います。
ここにはaccusedさん以外にも沢山の方が来ていただき、それらの皆さん方とともに培って来た雰囲気があります。
その雰囲気や流れを理解していただけないのであればすでに一見さんとしての来訪でなくなっている以上、ここから外れていただくしかないと思うわけです。
決して言論を封殺するとか意見が対峙するものを排除するというものではありません。
雰囲気や流れを乱すような進め方でなければいくらでもお受けいたします。
これまでも雰囲気を感じ取ってくれるだろうと思うからこそお応えしてきましたが無理なようですので、このようなお願いとなりました。

まして、今回an_accusedさんはご自身で私のことを「歪んだ先入観」と結論を出されたわけですから、今後そのような歪んだ先入観を持った拙ブログをお読みになったりコメントをされることは無いと信じております。
「アラシ」をされているわけではないのですから。

これまでのご指摘には感謝いたします。ありがとうございました。手直しすべきところは手直ししてまいります。
by 南雲しのぶ (2006-06-18 18:48) 

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