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残念だが二審に期待したい2 [飲酒運転撲滅]

「3幼児死亡事故判決 「妥当」「世論を無視」 分かれる評価」(iza!)


福岡県飲酒運転幼児3人死亡事件で福岡地裁は「危険運転致死傷罪」ではなく「業務上過失傷害などによる併合罪」により懲役7年6月の判決を行った。
世論の主流は「これで危険運転にならないのなら何が危険運転なのか」「もう危険運転で裁かれる犯人はいない」とまで言われている。
私もそう思う一人だ。

今回の裁判で事実として認定されたのは
「飲酒をした上で運転をしていたこと」
「80~100キロのスピードを出して走行していたこと」
「被害者は居眠り運転ではなかった」
の三点が主なものだ。

上の二つだけでも十分に「危険な運転」なのだ。
しかし、裁判所は
「飲酒検査で呼気0.25ミリグラムだった」
「乗車後、事故現場に至るまで事故も起こさずまた蛇行運転をしていたわけでもない」
「事故直前12メートル手前で前車(被害者の車)を認知し回避行動をとり、衝突後に自車線へ復帰させている」
だから「危険運転ではない」とした。

「危険運転致死傷」が適用できないのであれば別の法律を作って厳罰にしたら良いという声も上がっている。
これは自分たちの首を絞めていることになるのだ。
以前、同様な記事を書いた時に「無過失でも厳罰という法律を作れば良い」というアドバイスがあったが、実際にそのような法律ができた時、知らぬ間に酒類の含まれるものを飲食してしまい自ら認知しない状態で「危険運転致死傷」になる可能性がある。
夜飲んだ酒が朝になっても残っていたからと言って許されるものではなくなる。

「危険運転」の法律ができた時も、そういうことを避けようと言う思いから「故意性」の立証を求めるものになった可能性は高い。
結果、法曹人たちは「故意性なんてなかなか立正できるものではない」という戦法をとり、立法時に期待されていた「飲酒運転を国民的に撲滅する」という本旨から法律をドンドンと遠ざけてしまっている。

私的にこの法律の主旨は、捕まえて厳罰にすることが目的ではなく、先述したとおり「飲酒運転撲滅」なのだ。
これを否定する人が居るだろうか。
それを踏まえた上、今回の事件で危険運転を適用できないどころか、判決にあるような理由で適用できないということになれば飲酒運転など絶対になくなるわけがない。

厳罰化だけが撲滅の手段ではないが、結果として厳罰化する以外で数を減らすことが難しい。

被告側の人権(抗弁する権利など)を奪うつもりはないが、ずるい奴ほど得をするということのないようにしなければならない。
例えば、被告側は最初に「被害者の車が急ブレーキを踏んだから追突した」というコメントをしている。
しかし、急ブレーキどころかブレーキも踏んでいないことが立証されている。
ということは「前車が急ブレーキを踏んだと思いこんだ」ということではないのか。
それは正常な運転ができていなかったことにならないのか。

弁護側の被害者批判は二転三転しており、審理を妨害する意図をもっての行為と言われても仕方がないな発言ではなかったのか。
終いには「居眠りをしていた」「衝突後、橋から落下することを回避しようとしなかった」などと騒ぎ立てている。
判決では全て否定されているが。
これはきっと弁護士が九州弁護士界の大物だからなのだろう。
地獄の沙汰も金次第とは良くいったものだ。

それからこの判決直後から厳罰化を求める声が高まっている。
厳罰化するということは良いことなのだが、実は市民生活に大変影響があることを自覚してもらいたい。
無過失であっても厳罰に処せられる可能性がでてくる。
これは、軽度のアルコール残量(昨晩の晩酌が一晩明けているにも関わらず等)でも長期の懲役刑が科せられる可能性が有ると言う事で、不都合な人物をこれによって懲役30年近くを与えることができる。
自分がいつ不都合な人間にさせられるかなどわからないのだ。
その他の厳罰化の方向性についても、同様に自分たち(一般的な日常生活という意味で)に関わる可能性を考える必要がある。
それよりもせっかくある法律を適切に運用できるようにするだけで十分なのではないか。
いや、そうすべきだ。
もし、新たな厳罰な法律を作ると言うのであれば、認定理由を明確にするべきで国民もそれに納得することが必要と言えよう。
私は飲酒運転撲滅を求めるが、単純な「厳罰化」は綺麗に聞こえるだけの可能性があり、もう少し考えようではないか。

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残念だが二審に期待したい

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モコ兄

僕の家で購読している読売新聞の投書の欄に
早速この裁判に対する意見がありました。
意見は(納得いかない)と(判決は妥当)と
2通りありました。
(判決は妥当)の方の意見には
(人間は法の名の下に平等であるべき)とか
(感情論だけで物事を言ってはいけない)
と書いてありました。
僕はこれを読んで腹立たしい気持ちと
書いた奴の心の冷たさを感じました。
書いた奴は被害者の立場に立ったとき、
その考えを貫けるんでしょうか?
確かに感情論だけで人は動いてはいけません。
その意見は分かります。
しかしその意見の内容には
人間味が感じられませんでした。
まるで機械の様です。
書いた奴は杓子定規の奴なんでしょう。
実名で投書してあったので
(というより実名以外はダメなので)
いまごろこれを読んだ人達に
陰口を叩かれているんでしょうね。
職場でも嫌われていそうです。
人間は心を無くしたら終わりです。
この言葉を最後にこの長文を
終わらせる事にします。
by モコ兄 (2008-01-10 12:36) 

kenji47

>裁判所は
「飲酒検査で呼気0.25ミリグラムだった」
「乗車後、事故現場に至るまで事故も起こさずまた蛇行運転をしていたわけでもない」
「事故直前12メートル手前で前車(被害者の車)を認知し回避行動をとり、衝突後に自車線へ復帰させている」
だから「危険運転ではない」とした。


現在までの危険運転致死傷罪の判例に従えば、妥当な判断といえます。
危険運転運転と判断された事例では、より重大な危険運転運転の事実が認定されています。
前にも書きましたが、法は「事実」に対して適用されるものなのですから、危険運転運転とされた判決、されなかった判決それぞれについてどのような事実が認定されているかご覧になってはいかがでしょうか?
by kenji47 (2008-01-10 13:38) 

南雲しのぶ

モコ兄さん、コメントありがとう。
私も今回の判決は裁判所の出しうる最大限のものだと思っています。
ただ、妥当であるか否かだけを問えば妥当ではないと考えます。
社会が飲酒運転に対して厳罰を求めてできた法律でありながら、法律の読み方次第で結局活用できないことに苛立ちを覚えます。
そのため法律の社会というものが如何に市民感情から離れているかを表す機会となってしまったことがとても残念でなりません。

3人を死なせておいてこの程度というのは誰しもが思う悔しさですが、今の日本ではそれが限界です。
悪い奴ほど得をする世界ですから。
by 南雲しのぶ (2008-01-10 18:48) 

南雲しのぶ

kenji47さん、コメントありがとう。
裁判の前例踏襲主義はわかりますが、これでは社会的に不満が残り、結果もっと厳罰を求める声があがりませんか?
現行法で事足りるはずものがあるにも関わらず、新しい法律を作れという声があがるというのは立法界も司法界も恥ずかしいことだと思うのです。
現行法に故意性を立証せねばならないと書いてあると言われますが、そのまま素直に読んだ時、どこにそんなことが書いてあるのでしょう?
正常な運転が困難な状況だったから事故が起きたのではありませんか?
正常な運転をしていて事故が起きると言う事例がありますか?

それに飲酒検問で酒気帯びだと捕まるわけですが、この時「私はここまで8分間どこにもぶつからず信号無視もスピード違反など法規に違反していませんから逮捕されるいわれはない」とそれまでの走行が事実として証明できれば言っていいわけですか?
そういう分けには行かないでしょう。
それ以前に飲酒運転がダメな理由ってなんですか?

これまでの判例と比較してみれば良いと言われますが、これまでの判例自体に問題があると私は思っているのに比較する意味ってないと思います。
もちろん、判例は読んでみたいと思いますが。

kenji47さんは、飲酒運転を認めるのですか?
前回の問いかけでは一般論として答えられてご自分のご意見としてはいただけなかったので再度。
危険運転致死傷罪と絡めるのではなく、飲酒運転を認めるのか否かです。
それとその理由も聞かせてください。
by 南雲しのぶ (2008-01-10 19:17) 

あまちゃん

 自分の理解では、お酒を飲んでいた時点で危険運転だと思いますよ。
酒を飲んで、車の運転をする自体がおかしい。
自分が知っている人たちも同様な理解をしています。

 この事件で危険運転致死傷罪が適用されないと、
今後は相当な飲酒をしないと適用されないんですかね。

世論とはかけ離れた判決だったと思います。
by あまちゃん (2008-01-10 21:34) 

南雲しのぶ

あまちゃん、コメントありがとう。
誰しもそう思う所だとおもいますよ。
しかし、法曹界ではそうでないのです。
だったら飲酒検問なんてしなければ良いのですが、そうもしません。
酒を飲んで運転して正常な運転ができるなんて信じられません。
by 南雲しのぶ (2008-01-10 21:41) 

kenji47

>現行法に故意性を立証せねばならないと書いてあると言われますが、そのまま素直に読んだ時、どこにそんなことが書いてあるのでしょう?

刑罰法規の一般原則からそれは明らかです。
たとえば殺人罪は、

第199条(殺人)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

とありますから、故意を誰が立証すべきとは書かれてませんが、訴追側が立証責任を負うのは当然だと考えられています。


>kenji47さんは、飲酒運転を認めるのですか?
前回の問いかけでは一般論として答えられてご自分のご意見としてはいただけなかったので再度。
危険運転致死傷罪と絡めるのではなく、飲酒運転を認めるのか否かです。
それとその理由も聞かせてください。

飲酒運転は許されない行為だと思いますよ。
それは飲酒によって正常な運転ができない状態になる可能性があるからです。
それを前提とした上で、危険運転致死傷罪は飲酒により「正常な運転が困難な状態」であったことが要件とされます。
危険運転致死傷罪は、危険運転を故意の「暴行」と同程度の悪質性を持った行為であることを理由に重罰を科すというものですから、実際にそのようないわゆる「泥酔」というような状態である必要があります。
酒気帯びの場合がすなわち「正常な運転が困難な状態」であるわけではありません。

トラックバックした私の記事もご参考にしていただければと思います。
by kenji47 (2008-01-10 22:46) 

kenji47

この落合弁護士のコメントが非常にためになると思われます。

ご参考までに。

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20080109
弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」
by kenji47 (2008-01-10 23:00) 

南雲しのぶ

kenji47さん、コメントありがとう。
「故意を誰が立証すべきとは書かれてません」
これが全てなのだと思います。
普通、市民は事件毎に適用される条文しか読みません。
法学論としてどうなっているかなんて知らないわけです。
だから「書いていないじゃない」というのが素直な気持ちなのではありませんか?
もちろん、「見ていない、知らない方が悪い」ということになるのでしょうが、それが通るのでしょうか?
向いている方向が違うから法律に詳しい人たちが「法律はそういうものだ」と言っても納得できないのでしょう。

私とて、これが普通に生活している人たちを保護するための機能だと言うことはわかります。
しかし、この事件では被告がすでに複数回の違反歴があり、今回も飲酒直後に運転しているということをもっと深く捉えるべきなのではないでしょうか。

飲酒運転の件では、ではやはり「私は正常な運転ができていたし、これからもできる」と証明できれば飲酒運転しても構わないと言うことになりませんか?
by 南雲しのぶ (2008-01-11 06:41) 

南雲しのぶ

kenji47さん。
ご紹介いただいた「日々是好日」ブログ、大変勉強になります。
ただ、まだ納得に至るまでにはなっていませんが。
by 南雲しのぶ (2008-01-11 06:46) 

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