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「日本の裁判というのは何にしても長い」のか [時事・日常生活]

あれから9年の歳月が(山口県光市母子殺害事件考)

先日、上記の記事で
日本の裁判というのは何にしても長い。
9年かかってもまだ確定できずに居る。
この長さが「判決を教訓にできない」理由なのかも知れない。
と書いた。

このことについて、コメント欄でkenji47氏から
「日本の裁判が長い」
と言うならば何処と比べて長いのか考えてみたほうがよいのではないでしょうか?
とご指摘をいただきレスにおいて私の思いを答えたものです。

このことは非常に重要な問題だと思うので改めて記事として取り上げたい。

私にとって裁判というのは、加害者・被害者と言う当事者だけのものではなく、日本にいる全員にかかわるものなのだと思っています。
ですので加害者が刑罰と言う形で制裁を受ければ終わり、というものではなく、社会全体でその事件のことを考えるものでなければなりません。

先述の発言についても、そのことを考えた時、日本で行なわれている裁判は、確定するまでに時間がかかり過ぎているのではないか、との思いを込めたものでした。
ですので、「どこの国と比較して」ということではないことはご理解いただきたいと思います。

それとともに、裁判は正確にかつ慎重に行なわれ公平で明確な形で確定しなければならないことも十分に認識しているところです。

ただどうでしょう。
山口県光市母子殺害事件を例示として使えば、第二審の広島高裁(第一次)判決で「無期懲役」が出て、03年3月27日に検察が上告してから最高裁が弁論期日を決めるまでに約3年8月が費やされています。
もちろん、順番であるとか最高裁内での調べとかいろいろな理由があり他と変わらないのかもしれません。
差し戻し審は判決までに約12ヶ月です。
この約1,300日(約44ヶ月)というのはあまりに長いのではないでしょうか?

そして、一審以来、9年。
光事件こそ、事件発生当初よりも現在の方が加熱報道されているような事件は別として、ほとんど忘れ去れてしまう年数ではないでしょうか?

例えば、光事件の約5ヶ月後に起きた、女性2名が死に至らしめられた俗にいう「池袋連続通り魔殺害事件」など、今どうなっているかご存知の方がどれだけいるのだろうか?
この年には他に「下関通り魔事件」や「桶川ストーカー殺害事件」も起きている。
これらがどのように判決が確定し、被告と呼ばれていた人たちがどうしているのかなどよほどでなければご存知ではなかろう。

「池袋事件」では、最高裁の結論が出た時に「あぁ、そんな事件もあったね」程度の反応が私の周りではほとんどだった。
マスメディアでも淡々と判決を伝える程度で、事件発生当時のショッキングでセンセーショナルな取り上げ方とは全く違うものだった。

果たしてこれで事件を教訓できるのだろうか。
もちろん、裁判所というか司法関係者にとっては「判例」として生きて行くのだろうが、社会に対してどのような影響を与えられたのか。
「同様の事件を二度と起こすまい」ということにつながったろうか?

一つの事件は、そのことによって、刑罰を与えるだけでなく、被害者救済制度や社会復帰プログラム、犯罪予防システムが相互に向上していかねばならないのではないだろうか。
しかし、「熱し易くて冷め易い」という日本人の性格では、結局「厳格化厳罰化」論ばかりが先行してしまっており、これは後々自分たちの首を絞めることになる。
政治ビラの投げ込みをしたからと言って逮捕されたり、今までなら減刑されていたことが厳罰になったり、現実に起きており市民の多くは賛同の声をあげている。
「厳格化厳罰化」することも大切なことで、それを否定するつもりはない。
そのような風潮になる理由の一つに「裁判が長い」ということが「結果が出る頃には忘れ去られている」ことによるのではないだろうか。

裁判が慎重に行なわなければならないのは当然で、時間短縮は二律背反となり非常に難しいことなのだろうが、無知な人間の戯れ言と言わずにぜひとも法律に詳しい方々は考えてもらいたいと願うばかりです。
そしてまた裁判は続く。

[追記]
実は私の思いは、奇しくも本村洋氏が判決後の記者会見で言っていることと同じだ。
私が第一審での判決で初めてこの事件を認知して以降、追いかけてみて司法の慣習が本当に大きく変わって来たことを実感する。
そして、この判決で流れはまた大きく変わって行く事だろう。
ただただ心配なのは、これで確定した時に本村氏が燃え尽き症候群に襲われないかということだ。

関連資料
「【光市母子殺害】本村さん「ひとつのけじめついた」」(iza!)

このiza!の記事は記者会見の詳報でもなく、表面上をつまみ食いしただけですのであまり参考にはなりません。
詳報が出てくれると、彼の言わんとするところがわかるのですが、ちょっと残念です。

と言っている内に詳報が出てき始めました。
前段が無い状態ですので片手落ちなような気もしますが取りあえず。
「【本村さん会見詳報(1)】「彼も覚悟していたんじゃないかと…」」(iza!)

(1)となっていますから続編があると思いますのでご確認くだださい。

前記事(「山口県光市母子殺害事件考」のカテゴリーではないので直接の前記事ではありません)
速報として(山口県光市母子殺害事件考)


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コメント 14

さくら

初めまして、さくらと申します

この事件は私も当時から
ご主人の毅然たる態度に
とても心打たれていた一人です

本当に裁判は年数がかかり過ぎです

ご主人が本日
「死刑を求刑する様な事件の無い世の中に成って欲しい」
「加害者が本当の意味で反省の気持ちを持っていれば
死刑の判決にはならなかったかも知れない」
と言う様な言葉を仰っていました

そして、加害者が死刑になったところで
亡くなった奥様と娘さんは帰らないし
ご主人の無念は永遠に続きます

身勝手に人の命を奪ってはならない
加害者にはせめて生きてる内に
反省をしてから死刑を迎えるべきだと思う

死刑執行されたとして
ご主人は加害者の命の重さをも
背負って生きて行かれる様な気がします

あなたの記事にとても共感しました

万葉さくら


by さくら (2008-04-22 17:01) 

南雲しのぶ

万葉さくらさん、コメントありがとう。
全てが終わるまでに、周りの人の記憶から忘れ去られてしまっては意味が無いと思うのです。
そのことを本村氏も言及されていました。

今回の判決が妥当なものか否かは、今後社会が判断していくのでしょうが、少なくとも上告されていますからまだ確定はしていない宙ぶらりんです。

悲しいかな、このままでは被告弁護団が言うように「厳罰化」が促進されていくばかりでしかありません。
人の記憶にある内に結果がでるようにすることで少しは人々の関心にふれることができ、「厳罰化」の是非を考えられていくと思うのですが。
by 南雲しのぶ (2008-04-22 17:38) 

うつぼ

こんばんは。
見ず知らずの人からすればマスコミが騒げば意識するものの、落ち着けば忘れて違う事件に意識が行ってしまう、、、ということが普通になってしまうような気がします。(私も含めて、、の自戒の意味を込めてですが)
ただ、自分が被害者家族になってしまったら、、と考えると今回のようなケースは仕事をしながら裁判に通い、結婚していた時間よりも、裁判に費やす時間の方が長い、一般の人がこういう状況に晒されるというのは精神的だけでなく金銭的、物理的、様々な面で負担が大きいと思いますが、それでも(未成年だった)加害者に配慮のある現状には疑問が残ります。
死刑、厳罰化については(私なりに関連書籍を読んだりしていますが)未だ私の中ではどうすべきか考える部分が大きくどうすればよいものか、と思いますが、せめて被害者家族の立場に立って裁判の迅速化を促進すべきかとおもいます。
by うつぼ (2008-04-22 22:50) 

kenji47

裁判の迅速化を進めるには、根本的には、裁判所の人員増強、法曹人口増、公設法律事務所の増強、被疑者・被告人国選弁護の拡充などが必要であり、これらは相互に連関しています。
そして、これらの施策には多額の費用つまり税金が必要です。
こうした負担を覚悟することなしに、ただ早くしろと言ったところで早くなるはずもありません。
by kenji47 (2008-04-23 00:18) 

きっちい

事件や判決については色々な所で語られているので置いておきます。
私も昨日テレビで判決を聞いた時、本村さんの燃え尽き症候群が最初に頭に浮かびました。
一応の区切りはつきましたので、今後元気に生活して欲しいと思います。
by きっちい (2008-04-23 12:22) 

南雲しのぶ

うつぼさん、コメントありがとう。
人間ですから忘れてしまうと言う事は仕方が無いことだと思います。
また、よほどその事件に関連しているか興味を持っていないとその実態をしることはできないでしょう。
今の裁判制度というのは「忘れさせてしまおう」という感じがしてならないのです。
短縮できる部分は短縮して記憶の中にある内に確定できるような仕組みが出来れば良いのではないかと思っています。
もちろん、これは理想でしかありませんし、それが絶対でもありませんが。


by 南雲しのぶ (2008-04-23 19:16) 

南雲しのぶ

Kenji47さん、コメントありがとう。
確かにそうでしょう。
ただ、国に関して意見をする時に「予算措置も考えよ」と言われると何も話しができなくなっちゃうと思うのですがどうでしょう?

それはさておき、裁判所人員の増加や法曹人口の増加については新司法試験制度や裁判員制度導入によりそれなりの増加が期待できると思いますし、そうしなければならないでしょう。

公設法律事務所や国選制度についても同感です。
日弁連の中にも「年収が低い、仕事の無い弁護士がたくさんいる」と言っている人が居るようですので、新たな領域として認知されるかも知れません。
ただ、「国よりの対応しかしないのではないか」といううがった見方をする人が必ずでてくるでしょうが。

いずれにしても「このままで良い」ということは無いと思うのですがいかがでしょうか?

ところで、kenji47さんは今回判決をどのように受け止められましたか。
まだ確定している訳ではないので難しいかもしれませんが。
by 南雲しのぶ (2008-04-23 19:22) 

南雲しのぶ

きっちいさん、コメントありがとう。
判決への感想は、まだ判決文の要旨しか見ていないのでなんとも言えませんが、慣習を覆す善くも悪くも画期的なものでした。
その内に色々な感想や意見が出て議論が起きて来ることでしょう。

それにしても「人生の10分の1を費やしてしまった」という本村洋氏の言葉は重たいです。

by 南雲しのぶ (2008-04-23 19:28) 

kenji47

>ところで、kenji47さんは今回判決をどのように受け止められましたか。
まだ確定している訳ではないので難しいかもしれませんが。


想定内ですね。
最高裁の差戻し理由に高裁は拘束されていますから、審理の結果新たに汲むべき事実がないかぎりそもそも死刑は避けられなかったのです。
そして、被告人の新主張は信用性がないとして退けられたわけですが、これは、まぁそうだろうなと思うだけですね。

世間では、
「高裁の裁判長よくやった!」
などと言う方もおられますが、これはそういう問題じゃないんですよ。
高裁は最高裁の判断に拘束されているから、こうした判断しかできないというわけです。

この事件は上告されましたが、どこの最高裁内部で死刑適用拡大のコンセンサスがとれているとすると、このまま確定する可能性が高いと思わます。
by kenji47 (2008-04-24 00:05) 

南雲しのぶ

kenji47さん、コメントありがとう。
やはり想定内ですか。

今度の上告審は「死刑適用拡大」の是非が主題になるんでしょうかね。
ただ、やはり1年くらいかかるであろうと言う声もあるようでまだまだ先が長いんでしょうね。

私、思うのですよ。
kenji47さんのような法律に詳しい方がもっと情報発信をされるべきなんじゃないか、と。
私のように無知なものが情報収集しようとしても、難しい学問的なものや司法用語が羅列したものを理解するのは大変です。
もっと分り易い情報がドンドン発信されてくれば、多くの人が「司法制度」に関心を示すのではないでしょうか。
「刑法総論」を読まねば語れないなんていうこと自体、市民に受け入れられないと思うのですよ。
by 南雲しのぶ (2008-04-24 06:30) 

kenji47

>今度の上告審は「死刑適用拡大」の是非が主題になるんでしょうかね。

それは順当にいくともはや問題にならないと思います。
死刑適用拡大は差戻しした最高裁の判決で示唆されてますので、上告棄却の結論となる可能性が高いです。
異なる結論に至る可能性があるとすれば、再上告後に係属した最高裁の小法廷が差戻し判決に疑問を持っている裁判官で構成されているために、やはり死刑は不相当だとして上告認容する場合が考えられますが、まぁ現実的にそういう事態は想像しにくいです。


>ただ、やはり1年くらいかかるであろうと言う声もあるようでまだまだ先が長いんでしょうね。

1年以上かかるでしょうね。
これは最高裁には多数の事件が上告されているから仕方ありません。
最高裁判事の人数は限られているし、増やすのも法令解釈の統一を図るという最高裁の役割からすると難しいでしょう。

裁判の迅速化は下級審レベルで可能だと思います。
単純に裁判官や裁判所職員を倍増させれば、他の事情もあって半分の時間短縮とはいきませんが、かなりの迅速化が図られると思います。
ただし、それをやるにはすでに述べたとおり莫大な予算増を要することになります。

by kenji47 (2008-04-25 00:04) 

南雲しのぶ

kenji47さん、コメントありがとう。
裁判官により結果が異なるというのは良いようで悪いようで、結局「都合の良い裁判官に当たれるか」によって運命が分かれるということになってしまいますね。
以前、民事でしたか某裁判官が特定のバイアスのかかった判決を出すので、その人に当たるまで申立をしては取り下げ、また申立をするということがあったかと思います。
これではいくら「裁判官はロボットではない」としてもどうなんでしょうね。

今回の上告審では第一次のように4年もかかるなんてことがなければとは願いたものです。
迅速化については、お金をかけることも必要でしょうし、お金をかけないでできることがないかの精査を大切かも知れません。
例えば、事務的な処理の電子化とか、ってもうやってますかね。
あとは、なんでしょう。
証人が公判の裁判所まで来なくとも近くの裁判所に行けば良いようにするとか。
これもやってますかね。まぁ、最高裁は証人調べをすることが少ないみたいですが。

下級審での迅速化が実現すれば、全体的に見て早くに確定することになりましょうから、ぜひ取り組んでもらいたいものです。


by 南雲しのぶ (2008-04-25 20:35) 

kenji47

裁判官によって結論が変わることもあると思いますよ。
さすがに最高裁は法令解釈の統一を意識してますから、大きな差が生じるとは考えづらいですが。


>事務的な処理の電子化とか、ってもうやってますかね。

裁判所の事務は個別事情が多様で、法的知識を有する書記官など職員の判断に負っている部分が多いため、電子化には限りがあると思います。
by kenji47 (2008-04-26 00:19) 

南雲しのぶ

kenji47さん、コメントありがとう。
結論が変わることが良いのかどうかは常に悩みどころでしょうね。
法令解釈の統一意識をもって取り組んでくれているとのことなので、それを信じていくしかないのでしょう。

個別事情が多いのもわかりますが、出来る所から改めて行ってもらいたいものです。
やはり時間短縮は必要でしょうから。
by 南雲しのぶ (2008-04-26 07:11) 

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