このことについて、コメント欄でkenji47氏から
「日本の裁判が長い」
と言うならば何処と比べて長いのか考えてみたほうがよいのではないでしょうか?
とご指摘をいただきレスにおいて私の思いを答えたものです。
このことは非常に重要な問題だと思うので改めて記事として取り上げたい。
私にとって裁判というのは、加害者・被害者と言う当事者だけのものではなく、日本にいる全員にかかわるものなのだと思っています。
ですので加害者が刑罰と言う形で制裁を受ければ終わり、というものではなく、社会全体でその事件のことを考えるものでなければなりません。
先述の発言についても、そのことを考えた時、日本で行なわれている裁判は、確定するまでに時間がかかり過ぎているのではないか、との思いを込めたものでした。
ですので、「どこの国と比較して」ということではないことはご理解いただきたいと思います。
それとともに、裁判は正確にかつ慎重に行なわれ公平で明確な形で確定しなければならないことも十分に認識しているところです。
ただどうでしょう。
山口県光市母子殺害事件を例示として使えば、第二審の広島高裁(第一次)判決で「無期懲役」が出て、03年3月27日に検察が上告してから最高裁が弁論期日を決めるまでに約3年8月が費やされています。
もちろん、順番であるとか最高裁内での調べとかいろいろな理由があり他と変わらないのかもしれません。
差し戻し審は判決までに約12ヶ月です。
この約1,300日(約44ヶ月)というのはあまりに長いのではないでしょうか?
そして、一審以来、9年。
光事件こそ、事件発生当初よりも現在の方が加熱報道されているような事件は別として、ほとんど忘れ去れてしまう年数ではないでしょうか?
例えば、光事件の約5ヶ月後に起きた、女性2名が死に至らしめられた俗にいう「池袋連続通り魔殺害事件」など、今どうなっているかご存知の方がどれだけいるのだろうか?
この年には他に「下関通り魔事件」や「桶川ストーカー殺害事件」も起きている。
これらがどのように判決が確定し、被告と呼ばれていた人たちがどうしているのかなどよほどでなければご存知ではなかろう。
「池袋事件」では、最高裁の結論が出た時に「あぁ、そんな事件もあったね」程度の反応が私の周りではほとんどだった。
マスメディアでも淡々と判決を伝える程度で、事件発生当時のショッキングでセンセーショナルな取り上げ方とは全く違うものだった。
果たしてこれで事件を教訓できるのだろうか。
もちろん、裁判所というか司法関係者にとっては「判例」として生きて行くのだろうが、社会に対してどのような影響を与えられたのか。
「同様の事件を二度と起こすまい」ということにつながったろうか?
一つの事件は、そのことによって、刑罰を与えるだけでなく、被害者救済制度や社会復帰プログラム、犯罪予防システムが相互に向上していかねばならないのではないだろうか。
しかし、「熱し易くて冷め易い」という日本人の性格では、結局「厳格化厳罰化」論ばかりが先行してしまっており、これは後々自分たちの首を絞めることになる。
政治ビラの投げ込みをしたからと言って逮捕されたり、今までなら減刑されていたことが厳罰になったり、現実に起きており市民の多くは賛同の声をあげている。
「厳格化厳罰化」することも大切なことで、それを否定するつもりはない。
そのような風潮になる理由の一つに「裁判が長い」ということが「結果が出る頃には忘れ去られている」ことによるのではないだろうか。
裁判が慎重に行なわなければならないのは当然で、時間短縮は二律背反となり非常に難しいことなのだろうが、無知な人間の戯れ言と言わずにぜひとも法律に詳しい方々は考えてもらいたいと願うばかりです。
そしてまた裁判は続く。
[追記]
実は私の思いは、奇しくも本村洋氏が判決後の記者会見で言っていることと同じだ。
私が第一審での判決で初めてこの事件を認知して以降、追いかけてみて司法の慣習が本当に大きく変わって来たことを実感する。
そして、この判決で流れはまた大きく変わって行く事だろう。
ただただ心配なのは、これで確定した時に本村氏が燃え尽き症候群に襲われないかということだ。
関連資料
「【光市母子殺害】本村さん「ひとつのけじめついた」」(iza!)
このiza!の記事は記者会見の詳報でもなく、表面上をつまみ食いしただけですのであまり参考にはなりません。
詳報が出てくれると、彼の言わんとするところがわかるのですが、ちょっと残念です。
と言っている内に詳報が出てき始めました。
前段が無い状態ですので片手落ちなような気もしますが取りあえず。
「【本村さん会見詳報(1)】「彼も覚悟していたんじゃないかと…」」(iza!)
(1)となっていますから続編があると思いますのでご確認くだださい。
前記事(「山口県光市母子殺害事件考」のカテゴリーではないので直接の前記事ではありません)
速報として(山口県光市母子殺害事件考)